第5章

香椎柚葉視点

C市の潮風が塩の飛沫を運び、別荘のバルコニーでは白いカーテンが揺れていた。私は床から天井まで届く大きな窓のそばに立ち、はるか沖で海が白く泡立ち、うねるのを眺める。心は、様々な思いに沈んでいた。

ここは、和彦と私が仕事を辞めたら、一緒に住むはずだった場所なんだ。二人でパソコンの前に座り、この別荘の写真を何度も何度も眺めながら、未来の生活を計画したものだった。

今、私は一人でここに来た。別れを告げるために。

ドアベルの鋭い音が鳴り、心臓が締め付けられる。私は深呼吸をして、平静を装うと、玄関に向かった。

ドアの前に立っていたのは里奈だった。冷たい表情をしている。...

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