第6章
香椎柚葉視点
別れた後も、里奈の心は落ち着かなかった。今夜の香椎柚葉の振る舞いはあまりにも異常だった――あの贈り物、あの言葉、そして恐ろしいほど青白い顔色。考えれば考えるほど、何かがおかしいと思えてならなかった。里奈は日向和彦に直接問いただすことに決めた。彼からなら何か聞き出せるかもしれない。
一方、Y市、テクノールの三十八階。
朝鳴里奈はノックもせず、日向和彦のオフィスに飛び込んだ。日向和彦は巨大な革張りの椅子に座り、机の上には空のウイスキーボトルと散らかったIPO関連の書類が散乱し、まるで浮浪者のような有様だった。
「ひどい……日向和彦。その姿は何よ」
日向和彦が血走...
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