第7章

香椎柚葉視点

十五時間に及ぶ過酷な移動の末、私たちはようやくS市に到着した。夕日が遠くの赤い岩々を黄金色に染め上げており、息をのむほど美しかった。

ここは、和彦が私にプロポーズしてくれた場所。

三年前の春、私たちはここに旅行で訪れた。赤岩山の展望台で、夕日が空をピンク色に染める中、日向和彦は片膝をつき、ポケットから取り出した指輪を震える手で差し出した。

「柚葉、俺と結婚してください」

その瞬間、私は世界で一番幸せな女だと思った。泣きながら「はい」と答え、彼は私の指に指輪をはめ、そして強く抱きしめてくれた。

今、私は別れを告げるために、この場所に戻ってきた。

「柚葉、...

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