第8章

 高校二年生の夏、週末の補習授業でのことだ。席替えのせいで、私は黒沢大和とほんの数日だけ隣の席になったことがある。

 その頃の黒沢大和といえば、すでに全校生徒が知る『高嶺の花』だった。彼は常に単独行動を好み、その表情は氷のように冷ややかだった。

 私たちは並んで座り、時折、制服の布越しに互いの肘が軽く触れ合う距離にいた。だというのに、その一週間、私たちは言葉らしい言葉をほとんど交わさなかった。

 休み時間になると、女子たちが私の机の周りに集まってはお喋りに花を咲かせた。

 私の片想いは、友人たちの間では公然の秘密だったからだ。

「ねえ夏海、聞いた?」友人が神秘的なことでも打ち明ける...

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