第二十二章けんか

「捨てたわ」

「え?」

受付係はぱちぱちと瞬きをし、困惑したまま、エミリーの背中がエレベーターへ向かっていくのを見送った。

エミリーはいま、かなり苛立っていた。インディゴがいったい何を企んでいるのか、さっぱり見当がつかない。

彼女が望むのはただ、頭のおかしいトーマス家からできるだけ遠く離れて、自分の人生を生きることだけだった。

それに、メイソンの今の様子も気がかりだ。

乗馬牧場から戻って以来、メイソンはさらに口数が減り、夜もろくに眠れなくなった。悪夢で目を覚ますことがしょっちゅうある。

まるで、記憶の奥底に閉じ込められていた魔物が少しずつ鎖を断ち切り、繊細で脆いメイソンの心を侵食...

ログインして続きを読む