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出会ってつがいになった、あの忌々しい瞬間から、彼は一秒たりとも忘れることなく強調してきた。群れ全体が自分にかかっていること、だから死は選択肢にないと。刻印を消すための儀式ですら、彼は疑問を挟まなかった。

「だって、カタリナ様が亡くなった時、あの方は命を落とすことになっても戦争を始める覚悟でしたから」

「まあ……運命の相手を失って、さぞかし打ちのめされたんでしょうね……」

「いいえ、違うの」彼女は遮った。「彼の名誉と義務が懸かっていたのよ」

「どういう意味?」

「雄の務めは、自分の雌を守り、必要なものすべてを与えること。カタリナ様の死によって、フェンリル様は喪に服されたわ。ご自分の最も重要な使命...

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