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フェンリルを探す必要はなかった。彼がどこにいるか、正確にわかっていたから。

導かれたのは彼の匂いではなかった。焚き火の煙や松の香りが空気に残っていて、その跡を教えてくれたわけでもない。

そうではなく、彼の存在が放つ温かさだった。肌の下で微かに響く、捉えどころのない引力が、まるで灯台の光のように私を彼のもとへと引き寄せていた。

体は意思とは関係なく動き、足は見えない力に引かれるかのように前へ進んだ。まるで磁石が対になる片方に抗いがたく引き寄せられるように。

私はそれに身を任せ、本能にすべてを委ねた。夜の中を彷徨う足取りは静かだったが、目的ははっきりしていた。

今なら、これまで以上にはっきりとわ...

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