第157章

ライリー視点

ティーカップを取り落としそうになった。「カサック」。その名はまるで、物理的な一撃のように私を打ちのめした。ブラッドクロウの悪名高きアルファ。彼こそが、国境で気配を感じたあの男――私の「運命の番(つがい)」だったのだ。

あの時感じた繋がり、魂の奥底からの認知……それが、ムーンシェイドにとって最大の敵に対するものだったとは。

「大丈夫ですか?」私の顔色が急に青ざめたのに気づき、クロードが尋ねた。

「ええ」私は何とか答えると、手の震えを隠すためにカップを置いた。「ただ、彼自らが出向いてきたことに驚いただけです」

「ええ。側近を引き連れて、派手な登場でしたよ」クロードの口調は世...

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