第190章

リディア視点

脇腹に広がる深紅の染みを目にした瞬間、ノアの顔から血の気が引いていくのがわかった。戦士たちが捕虜を確保し、医療班が負傷者の手当てにあたる戦闘後の混乱のさなか、彼の瞳は私だけを捉えていた。躊躇うことなく、ノアは腰の医療バッグを揺らしながら駆け寄ってきた。

「今すぐ彼女を医務室へ!」ノアの声には、私自身でさえ驚くほどの有無を言わせぬ響きがあった。私が断る間もなく、彼は思いがけないほどの力で私を腕の中にすくい上げ、その胸に抱きかかえた。

私は怪我人の演技を続け、彼の肩にぐったりと頭をもたせかける。戦士たちの好奇の視線を感じた――彼らは、自分たちの戦闘教官がこれほど無防備な姿を見せ...

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