第六十八章

フレイヤ視点

「感じるんだ……」イーサンは洗面台の縁を強く握りしめながら、絞り出すような声で囁いた。彼の頑強な体が突然こわばり、震えが走る。「薬の影響が……良くならず、悪化している」

私は彼が目を固く閉じ、陶器の縁を掴む拳が白くなるのを見つめていた。彼の体内で暴れ回る何かと必死に戦うその姿に、私の胸は締め付けられるようだった。先ほど彼が語った、あの訴訟のこと、花のこと、そして呪いのこと――その釈明は私の怒りを削ぎ落とし、その後に残ったのは、二度と抱くことはないと思っていた、生々しいほどの愛おしさだった。

「手伝わせて」私はそっと言った。自分でも驚くほど優しい声が出た。あんなことがあった後...

ログインして続きを読む