チャプター 93

リディア視点

私はお祖父様の書斎の重厚なオーク材の扉をそっとノックした。片手には湯気の立つハーブティーのマグカップを持っている。トリカブトとカモミールの豊かな香り――ヴィクター様のお気に入りのブレンド――がふわりと立ちのぼり、鼻先をくすぐった。三分間蒸らし、蜂蜜をスプーン一杯だけ。彼の好みに合わせて完璧に淹れたものだ。

「入れ」少しこもった声が聞こえた。

私は肩でドアを押し開け、できる限り思いやりのある表情を浮かべた。「お祖父様、お力になればとハーブティーをお持ちしました」

ヴィクター様は窓辺の大きな革張りのアームチェアに腰掛けており、いつもより弱々しく見えた。膝の上には群れの歴史に...

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