第3章:彼の助け

ペネロペ

「なっ……」

私は咄嗟に体を、胸を、そしてお腹を隠した。

「クソッ」

彼は吐き捨て、両の拳を固く握りしめた。今にも狼に変化しそうな気配に、私は恐怖で凍りついた。髪は何度も手でかきむしったかのように乱れ、私を見据える瞳には狂気が宿っている。逃げ場はない。彼は怪物であり、私はここで彼と二人きり、完全に閉じ込められてしまったのだ。

「お前……やっぱりお前か。その服は一体どうなってる? なんでそんな格好をしてるんだ?」彼は怒りを露わにして問い詰めた。そもそも、なぜ彼がここに?

私はどうすべきかわからなかった。彼の荒い呼吸音が耳に届く。襲われる――そう確信した。彼は復讐を望んでいるのだ。私を痛めつけようとしている。背中が壁にぶつかった瞬間、もう終わりだと悟った。彼は何かを必死に抑え込んでいるようで、全身が張り詰めていた。間違いなく、それは憎悪と嫌悪感だろう。あるいは、抑えきれない殺意か。兄たちや父なら決して私を傷つけたりしない。だが、この狼は……。

「答えろ……」彼が命じる。彼が距離を詰め、覆いかぶさるように迫ってくるのを見て、私は息を呑んだ。ネイトはさらに近づき、壁に手をつくと、私の首筋ギリギリまで顔を寄せた。あまりにも近い。彼はまるで獲物を狙う捕食者のように、私の首筋や髪の匂いを嗅いでいる。

何か残酷な言葉でも囁かれるのかと身構えたが、声は聞こえてこない。代わりに聞こえるのは、何かと葛藤しているような狂乱した呼吸音だけだ。私の匂いのせい? それとも、どこから皮膚を引き裂こうか迷っているのだろうか? 彼にとって、そんなことは造作もないことだろう。

逃れようと身じろぎしたが、彼は激昂して私の腕を掴み上げた。

「このまま外に出るつもりだったのか? 裸同然で?」

「着替えてるところだったのよ……ここは女子更――」

「正気か?」彼が遮る。その視線が私のブラジャーへ、そしてお腹へと落ちるのがわかった。なんてこと、これは悪夢だわ。彼は何をするつもり? 私を笑いものにする気? それならまだマシかもしれない。私を拘束する彼の手は震えていて、その瞳は私の体に釘付けになっていた。かつて彼が嘲笑ったのと同じ体だ。もしかしたら、私がまだあの「おデブちゃん」で、ムーンストーン・パックの笑い種(ぐさ)のままだと確認したいだけなのかもしれない。

「前はこの制服じゃなかったはずだ。なぜ着替えた? そんな格好で外に出すわけにはいかない。ありえない。絶対にダメだ」彼は断固として言い放ち、私は混乱した。私が前に何を着ていたか気づいていたの? 一体どういうこと?

「私……これは新しい制服なの。着替えないといけないし」

「俺の話を聞いていたか?」

私の返事も待たず、彼は高級そうなジャケットを脱ぎ捨て、シャツのボタンを外し始めた。露わになったタトゥー、完璧に日焼けした肌、そして体に刻まれたいくつかの古傷を見て、私は息を呑んだ。なんてこと……彼は完璧だった。驚くほど魅力的な男性へと成長していたのだ。

「何をしてるの……?」彼の予期せぬ行動に混乱し、私は尋ねた。

腕には血管が浮き上がり、筋肉が隆起している。狼や複雑な図案のタトゥーは荘厳ですらあった。彼は背が高く、その逞しい胸板が私のすぐ目の前に迫っている。

ああ、月の女神様。断言できる。彼は私がこれまで見た中で、最も美しく、セクシーな男性だ。

「そのふざけた制服を脱げ」彼は命じた。

「なんですって?」私は聞き返した。正気?

「二度は言わないぞ。その服を、脱・げ。俺の言う通りにするんだ」威圧的な声で彼は言った。私に服を脱げと言うの? 裸になれと? 彼、ネイトの前で? やっぱり私を笑いものにするつもりなんだわ。

「嫌よ、そんな……」私は驚いて口ごもった。

「そんな格好で外に出すものか。俺が死んでもさせない。誰にもそんな姿は見せないぞ。ここから下着が見えてるんだよ……白か」彼は低く唸った。なっ、なんてこと!

「あなたにそんな権利な――」

「あると言ったらあるんだ! 黙って見てろ!」彼は怒鳴り散らした。この男、一体どうしちゃったの? 突然、彼の手が私のシャツに伸びてきた。私は彼を押し退けようとしたが、彼は素早い動きで布地を引き裂き、ボタンが部屋中に弾け飛んだ。

「何するのよ?!」私は叫び、屈辱で顔が燃えるように熱くなった。とっさに腕を胸の前で交差させ、完全に晒された体を隠そうとする。今まで男性の前で裸になったことなんて一度もなかったのに。一度もだ。それなのに、よりによって相手が彼だなんて。彼だなんて! 泣き出してしまいそうだった。これは悪夢だ。

「よくも……」私は彼を見上げ、声を震わせた。

彼は答えなかった。その代わり、自分のシャツを完全に脱ぐと、私の腕を掴んで袖を通させようとした。私は必死に体を隠そうともがく。彼は私の体をじっと見つめているようだった。まるで、もっと私を見たいと、私の曲線をもっと目に焼き付けたいとでも言うように。そんな考え、馬鹿げている……そうでしょ? たぶん、ただ私を辱めたいだけなのだ。絶対にそうだわ!

抵抗しようとしたが、彼の力には敵わなかった。彼の体から放射される熱気と、言葉にできないような香りが漂ってくる。それは……理性を狂わせるような香りだった。彼は震える指でシャツのボタンを留めていく。その視線は私の目から片時も離れない。最後のボタンまで留め終えると、まるで私が完全に覆われたことを確認するかのようだった。彼は……私を助けてくれているの?

彼のシャツは私には大きすぎて、まるでドレスのように体をすっぽりと覆っていた。裸で外に出るよりはマシな選択だったと、認めざるを得ない。だが、それだけでは不十分だと言わんばかりに、彼は私のスカートに手を伸ばしてきた。

月の女神様!

私はパニックに陥った。彼は、私が越えてほしくない一線を越えようとしている。

「離して!」私は叫んだ。

彼は驚いたように私を見たが、構わず再びスカートに手を伸ばした。今度は、私は彼の手をピシャリとはねのけた。

「動くな」

彼はつらそうに唾を飲み込んだ。もっと何か言いたそうだったが、言葉が見つからないようだ。それは提案などではなかった。アルファとしての絶対的な命令(コマンド)だった。

「何様のつもり?!」私は怒鳴り返した。彼は苛立った様子を見せながらも、その意志は固かった。私をその場に押さえつけると、シャツを引っ張りながら、スカートのファスナーを少し下ろした。彼の体はあまりにも近く、その香り、素晴らしい胸板や腹筋が目の前に迫る。

私は必死に抵抗した。彼の手が腰や脚、さらにはお尻にまで触れているのを感じる。彼はわずかに私を愛撫しているようだった。だが最終的に、彼はスカートをきちんとはかせ直しただけだった。彼のシャツのおかげで助かったとはいえ、押さえつけられ、触れられた後では、逆に無防備にされたような気分だった。

「ここは女子トイレよ……それに従業員専用なんだから! 出て行って!」私は気丈に言い放ったが、彼は動かなかった。何も答えない。「恥知らず!」

隙を見て彼の脇をすり抜け、ドアへと走った。外へ飛び出し、彼との距離が開いたことで、ようやく息ができるようになった。

「あいつなんて、クソくらえ」私は呟いた。彼だって私が嫌いなはずだ……なのに、どうしてあんなことを? 私はテーブルへ料理を運びながら行ったり来たりしていたが、体に残る彼の手の感触と、脳裏に焼き付いた香りを振り払うことはできなかった。

「おい、ウェイトレス……そう、そこのデブだ」

声がした。『クリムゾン・ファングス』の連中だ。ネイトも一緒にいる。彼はジャケットを羽織り、無表情を貫いていた。父の言うことを聞いて、今日は休みを取っておくべきだった。

「もっとマシなワインを持ってこい、デブ。俺が何を言ってるか分かるか? それとも詳しく説明してやろうか?」マルコが冷笑した。

「聞いてきます……」

「やめろ。どうせ時間がかかるだけだ。歩くことさえままならない、弱い人間だからな」彼が付け加えた。私はグラスを置こうとした。ナサニエルが手伝ってくれた。その指が時折、私の指に触れる。彼がこんなふうに触れてくるなんて想像もしなかった。てっきり、私に嫌悪感を抱いていると思っていたのに。

「手伝おうか?」いかつい見た目のアルファが一人、声をかけてきたが、不安で答えることができなかった。嫌がらせは終わったと思っていたが、すぐにマルコがふてぶてしくワインを床にぶちまけた。

「このワインは最悪だ! もっといいのを持ってこいと言っただろ!」彼が叫び、不満げな唸り声があちこちから聞こえた。

私は膝をつき、慎重に破片を拾い集めた。破片の一つに手を伸ばした拍子に、膝を切ってしまった。立ち上がると、ネイトの顔が怒りで歪んでいるのが見えた。たぶん、私が彼の群れ(パック)の恥さらしだと思ったのだろう。でも、私は『ムーンストーン』の一員ではないのに。

だが、ネイトも他の誰も、止めようとはしなかった。

他のアルファたちも怒鳴り始め、店内は混沌とした。ジャックは走り回り、バーテンダーのアンドリューは息つく暇もない様子だった。アルファたちはより良いサービス、より良い待遇を要求した。まるでこの町も、この食堂も、取るに足らないゴミであるかのように。

「あのおデブちゃん見たか? 前よりひどくなってるぜ。キモいな!」私が別のテーブルの接客をしていると、悪意のある声が嘲笑った。

「ひでぇな! 狼たちの間にいなくなって正解だぜ! 俺たちの評判が落ちちまう!」別の男が笑った。

「こっちに引っ越してきたらしいな……」ネイトの声は低く、唸るようだった。

「人間に干渉するな。彼らは最善を尽くしているんだ」別のアルファがしわがれた声で言った。大きなタトゥーを入れた男のようだった。

「俺の気のせいか……あのデブみたいな臭いがしないか? あいつの酷い臭いが、俺たちの間に漂ってるような」マルコが尋ねたが、誰も答えなかった。すぐに話題は、はぐれ狼(ローグ)とその問題についてに移っていった。私はため息をついた。彼らはすぐに私のことなど忘れるだろう。

夜が終わる頃には、心身ともに疲れ果て、恐怖で震えていた。その時、自分がまだネイトのシャツを着ていることに気づいた。信じられないほど良い香りがした。

帰り道、何があったか話そうと兄弟たちを探していた。一緒に美味しい夕食を食べたかったのだ。その時、声が聞こえた。

「話がある」

ナサニエルがそこにいた。彼は……私を待っていたようだ。一人だった。ジャケットの前をはだけ、素肌を晒している。彼の視線が私に注がれていた。パニックにならないよう努めた。またしても二人きりだ。森のそば、無実で愚かな女を殺すには絶好の場所。

今の私は、はぐれ狼よりも、目の前に立つこのアルファのほうが恐ろしかった。

前のチャプター
次のチャプター