第321話

ルーシー

三日月祭りの開幕舞踏会は緊張した雰囲気で終わりを迎えた。その後、私はオーレンの姿を見かけなかった。デイビッドが祭りの競技の開始を告げると、私は群衆に混ざって競技場へと向かった。オーレンとデイビッドの間の一触即発の事態にもかかわらず、夜は笑い声に包まれていた。私たちが競技場に向かう間、冷たい夜の空気が私の周りを漂っていた。私はブラッドムーンの観客席へと案内された。

そのとき私は彼を見た。大きな石の上に腰掛けた人影が、顔を月に向けていた。

マットだった。彼は意図的にそこにいるようには見えなかった。おそらく群衆から逃れようとしていただけなのだろう。私の足取りは一瞬躊躇した。しかし、彼の丸...

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