第10章

彼は車のほうへ駆け出し、その男を引き剥がそうとした。

そのとき、ポケットのスマホがけたたましく震えた。

苛立ちながら取り出し、そのまま切ろうとして――画面に表示された佳奈の名前に、指先がぴたりと止まる。

ほんの一瞬、その動きが遅れた。

その隙に、浜原恵也はもう運転席へ回り込み、エンジンをかけていた。

車は一気に走り去る。排気ガスすら、森田浩介には残さない。

森田浩介は拳を握りしめた。骨が白く浮き出るほどに。

消えていった車の先を睨みつけたまま、通話ボタンを押す。

「浩介……」

受話口の向こうから、涼宮佳奈の弱々しい泣き声がした。

「具合が悪くて……胃がすごく痛いの……」

...

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