第108章

鈴野和夫が裏で手を回して世論の火消しをしたのだろう。鈴野成俊が人を殺そうとした件はH市では大きく広まらず、知っているのはごく一部の関係者だけだった。

公判当日、水原丈也の出廷には水原茜と浜原恵也も付き添った。

遠目に、茜は鈴野成俊と背丈がほとんど同じで、顔立ちにもどこか共通点のある男を見つけた。

ただ、あの策士めいた鈴野成俊と比べると、その男はどこか温和で、品がある。カシミヤのコートを羽織り、年齢も若く見えたし、身なりも整っていた。

「……あれが鈴野成瀬よ」

浜原恵也が声を落として言う。

鈴野成俊の実弟で、鈴野寧々の父親。

茜の視界には、成瀬の少し後ろを歩く鈴野寧々の姿も入った...

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