第113章

この雪は、量が多いだけじゃない。降り続いた時間も、やたらと長かった。

丸三日。H市はまるで、氷と雪の中で「一時停止」を押されたみたいに息を潜めていた。

雪がようやく止んだ頃になって、ノアグループ人事部から出社再開の通知が出る。

外は相変わらず凍える寒さで、水原茜は玄関を出た瞬間、思わずぼやいた。

「人って、なんで働かなきゃいけないの?」

浜原恵也が、彼女のふわふわしたマフラーをきゅっと引き寄せる。

「それ、言う相手と場所を選んだほうがいいんじゃないか」

そういう愚痴は、サラリーマンの専売特許だ。

水原茜は手にした新品の社員証をひらひらさせた。

「今日の私は人事部の新人社員、...

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