第157章

鈴野和夫は、自分がいま危険な綱渡りをしていることを、痛いほどわかっていた。

それでも足を止めない。引き返しもしない。

退きたくないからじゃない。

退けないのだ。

水原家も敵に回せない。白原家も同じ。

声の小さい人間に残される道はひとつ――誰かに寄りかかって生きること。

寄生虫みたいに。

宿主を失えば、待っているのは死だけ。

鈴野和夫の全身から、死臭めいたものが滲み出ていた。今にも息絶えそうな、どんよりとした倦怠が、避けようもなく周囲へと広がっていく。

水原茜は、これ以上は何を聞いても無駄だと悟った。浜原恵也の腕を引き、病室を出る。

廊下では、早坂流子が鈴野寧々に縋りついて...

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