第68章

H市屈指の高級ホテル。眩いほどの絢爛さに満ち、巨大なクリスタルシャンデリアがきらめきを撒き散らす。大きなドームの下には享楽の気配が澱み、香水と酒と欲望が混ざり合う。どこを切り取っても、贅沢の匂いしかしない。

鈴野和夫は個室に座り、苛立ちを紛らわせるようにグラスを傾けていた。周囲の仲間が勝手に盛り上がっている声が耳に入っても、輪に入る気はさらさらない。

ポケットのスマホがぶるぶると二度震えた。眉をひそめて取り出し、発信者名を見てから通話を繋ぐ。朝日明人だ。鈴野和夫は受話口を耳に寄せた。

「鈴野様。今日の午後、うっかり鈴川薫子さんが清水青子さんと話してるのを聞いてしまって……水原様がL...

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