第70章

赤い紅葉の撮影現場。

「佳奈さん、これ食べてみて。昨日、うちの母が実家から送ってくれたの。今年採れたばかりの水蜜桃で、市場じゃ絶対こんなの買えないよ」

女の子がフォークでひと口大に切った水蜜桃を刺し、涼宮佳奈の口元へ差し出した。

「水蜜桃なんて、どれだけ美味しくても結局あの味でしょ? 佳奈さん、こっち。うちから届いたさくらんぼ……」

涼宮佳奈の周りには人が群がり、並ぶ表情はどれもこれも媚びた笑みばかりだった。

彼女の恋人は、この現場に金を出している大物。そもそもこの作品自体、涼宮佳奈ありきで立ち上がったと言っていい。だから彼女が現場の中心人物になるのは当然だった。

映画が当たれば...

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