第91章

「水原さん!」

耳に残ったのは、切羽詰まった叫び声だけだった。水原茜は呆然としたまま、森田浩介の身体が力を失い、ずるりと崩れ落ちていくのを見つめる。

立ち去る直前まで、彼の目だけははっきり覚えていた。

安物の玩具に嵌め込まれたプラスチックの目玉みたいに、光がない。虚空を、ただ暗く見据えている。

息をするたび、血の生温い甘さと鉄の匂いが鼻の奥にまとわりついた。

家政婦はすでに取り押さえられていた。救出に来た男が水原茜を抱え上げ、そのまま大股で外へ運ぶ。

水原茜は相手の服を掴み、指に力を込めた。

「……彼、死んだの?」

男は答えをずらす。

「後処理は担当が入ります。水原さんはご...

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