第97章

水原丈也の視線がこちらへ流れ、まっすぐに水原茜の手の中の懐中時計へ落ちた。

咳き込む動きがふっと緩み、彼はぼんやりとそれを見つめる。

彼の位置からでは、蓋の内側の写真など見えるはずもない。それでも水原丈也の顔には、痛いほどの懐かしさが浮かんでいた。

広瀬仁美が写真をちらりと確認した瞬間、血の気が引くのがはっきりわかった。

彼女は慎重に懐中時計を水原茜の手から受け取り、そのまま水原雄一へ渡す。

「兄さん……こんなに長い間、まだ手放せないのか」

水原雄一が重い声で言った。

水原茜は、写真の中の小さな女の子に見覚えがない。けれど二人の口ぶりと、両親の表情だけで察しはついた。

その子...

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