第112章

「ひとつ、頼まれていただけますか」

星野星はかすかに微笑んだ。

警戒心――それは、どこへ行こうと手放してはいけないものだ。

まして後藤教授は、もともと品行方正な人間でもない。

「引っ張るな。俺も行く」

後藤教授は、彼女がここまで遠慮なく出るとは思っていなかったのだろう。腹立たしさに顔を真っ赤にし、ひげを震わせた。

三人は建物の中へ入ったが、あのカードを使う場面はなかった。

ここの扉は虹彩認証式だ。持ち主が不在の時にだけ、あのカードが必要になる。後藤教授本人がいる以上、行く手を阻むものはない。

やがて地下の保管室の前にたどり着く。

後藤教授は扉を開けると脇へ退き、いかにも惜し...

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