第124章 誰もお前と奪い合わない

「はいはい、わかったわかった。あんたの、あんたの。誰も奪いに行かないって」

小林健太は心底思った。こいつはもう手遅れだ、と。

白い車がマンションの前で止まる。ここは星野星が自分で買った物件だった。最初に大きく稼いだ金で手に入れた、いわば原点みたいな場所。

本当はジジイと一緒に住むつもりだった。

けれどジジイは、にぎやかで騒がしいS市が肌に合わないらしく――結局、ずっと空き家になっていた。

名義の不動産なんて両手の指じゃ足りないほどあるのに、それでも彼女は、最初に買ったこのマンションへ戻ってきた。

広くはない。でも、妙に落ち着く。温かい。

軽く片づければ、すぐ住める状態だった。

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