第65章 彼女は顔を赤らめなかった

佐藤義哉はゆっくりと手を下ろした。

「俺は平気だ」

だが、さっき一瞬だけ顔に苦しげな色が浮かんだのを、星野星は見逃していない。

有無を言わせず、彼の手首をつかんで部屋へ連れていく。

自分の手首を押さえる細い指を見て、佐藤義哉はわずかに唇を上げた。部屋に入ると、片手で扉を閉める。

「胸が痛いんですか?」

星野星が訊く。

佐藤義哉は唇を引き結び、それから小さく答えた。

「少しな」

「いつからですか?」

「山から戻ってからだ」

律儀に答えた直後、胸の奥がずしりと詰まるように重くなり、思わず手を上げてそこをさすった。

次の瞬間、星野星はためらいもなく彼の服に手をかけた。

び...

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