第116章

オフィスの扉はきっちり閉まっていなかった。

その隙間が、目黒千音に中の様子を覗かせる。

デスクの前に、白いワンピースの少女が立っていた。背を向けているせいで顔は見えない。けれど、若い――それだけは分かる。

目黒千音の位置からは、立花一夜の横顔が見えた。表情は淡々としているのに、少女に言葉をかける瞬間だけ、瞳の奥にふっと柔らかな色が差す。

その優しさを、千音は知っている。

以前の一夜は、たしかにそういう目で彼女を見た。――出張に出てからは、一度も。

どうして……。

呟いた途端、胸の奥がきりきりと痛んだ。息の仕方すら忘れる。

そして次の瞬間、さらに心を砕く光景が訪れる。

夏目寧...

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