第138章

「帰ろう」

ようやく、甘いのにどこか背筋の冷える声が背後から響いた。

目黒善信はびくりと肩を跳ねさせ、慌てて子犬みたいに小走りで目黒思月の隣へつく。

「どうだった?」

声を潜めて探りを入れると、思月が鋭い視線で釘を刺してきた。

善信は反射的に首をすくめる。ぼそぼそと不満を漏らした。

「俺だって姉ちゃんのことも、親父のことも心配してただけだろ……」

思月は機嫌がいいらしい。顎を上げ、ふん、と鼻で笑う。

「私が出てるのに、何を心配するの?」

そう言いながら目を細め、瞳の奥に計算の光を走らせた。

「今日ここに来たのは、父親のためだけじゃない」

その言い方が善信の興味を煽った。...

ログインして続きを読む