第154章

曽我介が工房へ戻ると、普段は便宜上きちんと閉めていない扉が、今は大きく開け放たれていた。

こめかみがぴくりと跳ねる。嫌な予感が胸を刺し、彼は弾かれたように病室へ駆け込んだ。

――芳子を寝かせていたはずのベッドは、空っぽ。

「……終わった」

曽我介はその場に立ち尽くし、掠れた声で呟いた。

ほどなくして、芳子失踪の報せは立花一夜の耳にも届く。

音無補佐はハンドルを握りながら、バックミラー越しに社長の表情をそっと窺った。

落ち着き払った顔つきに見えて、ようやく息をつく。

「……わざと、だったんですね。だから曽我さんに、芳子さんの容体が安定したことを目黒嬢へ知らせるなと」

語尾には...

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