第160章

「――あれは……千音?」

篠原小雨は目をこすった。信じられない、という気持ちの奥で、じわりと目の縁が熱くなる。

「おばさん……?」

立花帝が驚きで口をあんぐり開け、隣で同じく呆然としている音無補佐の腕を小突いた。視界の端では、唇を引き結び、平然を装っているおじさんの横顔を盗み見る。

だが、立花一夜は「平然としている」のではない。――ただ、茫然としていた。

瞬きすら忘れたように、彼はステージ上の人物を見つめ続ける。灼けるような白いライトを浴びたその姿は、まるで地上に降りた天使の女神。かつて彼の心を射抜いた、澄みきった月光そのものだった。

夏目寧々――。

唇がわずかに動く。指先が震...

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