第52章 立花帝

翌朝早く、けたたましいアラーム音が部屋の静けさを切り裂いた。

目黒千音はゆっくりと目を覚まし、反射的に隣へ手を伸ばす。

――冷たい。

シーツにはもう、人肌のぬくもりが残っていなかった。

つまり、立花一夜は自分より先に起きている。

立花グループの社長ともなれば、毎日が回り続ける独楽みたいなものなのだろう。

こんなに早起きで、こんなに忙しくて。疲れないはずがないのに。

千音も布団の甘い温度に浸っている余裕はなく、ぱっと身を起こした。

手早く身支度を整え、メイクと髪をまとめる。

鏡の中の自分が、数分で“仕事のできる女”の顔に切り替わっていく。

今日は取引先との約束がある。忘れる...

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