第82章

立花一夜はわずかに首を傾けた。

目黒千音は、彼が勝ち誇ったように「ある」と言い切るものだと思っていたのに、返ってきたのは驚くほど淡々とした一言だった。

「ない」

――証拠が、ない?

千音はぱちりと瞬きをして、自分の耳を疑う。聞き間違いじゃない。確かに、そう言った。

「じゃあ、どうしてさっき……法廷で証拠を出すって言ったの?」

その問いに、立花は軽く眉を上げただけ。説明する気はない、勝手に考えろと言わんばかりの顔だ。

千音は少し考えて、すぐに腑に落ちた。自分の答えを確かめるように口にする。

「今はないってだけで、開廷のときにないとは限らない……そういうこと?」

「……」

肯...

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