第93章 捕まる

再び意識を取り戻したとき、目黒千音は頭が割れそうに痛み、視界には幾重もの残像が揺れていた。鼻を刺す工業廃ガスの悪臭が充満している。両手は椅子の背で後ろ手に縛り上げられ、身動きひとつ取れない。

「起きたか」

辻永の、湿ったように陰気な声が闇から落ちてきた。

どこにいるのかは見えない。ただ、暗がりの奥で赤い火種がちらちら明滅している。煙草の火だ。妙に不気味だった。

目黒千音は身体をよじって抵抗する。だが、無駄だ。

縄は異様なほどきつい。しかも、なぜか――もがけばもがくほど食い込み、最後には息が上がって肩で呼吸するだけで、ほどける気配すらなかった。

「辻永……私を攫って、何がしたいの」...

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