第98章

目黒千音の胸の奥では、さっきの彼の言葉がずっと反芻されていた。ぼんやりしたまま、思わず口にする。

「じゃあ……最初から、政略結婚だから私と結婚したわけじゃなかったの?」

それを聞いた立花一夜は、眉をわずかに上げた。

「俺に、政略が必要だと思うか?」

立花家は帝都第一の名家。立花一夜自身も史上最年少で財政内閣大臣に就いた男だ。確かに――勢力固めのために婚姻を利用する必要など、どこにもない。

目黒千音は急に頬が熱くなった。考えればすぐ分かることなのに、彼女はずっと勘違いして、勝手に拗ねていたのだ。

耳元で、低い笑いが落ちる。

立花一夜が身をかがめ、彼女の腰を抱いた。唇が耳朶に触れる...

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