第2章

通話終了ボタンを押し、携帯を伏せて置いた。さっきまで胸を締めつけていたパニックは、きれいさっぱり消し去って。

振り返ると、カシウスが腕を胸の前で組んで立っていた。見下ろしてくるその姿勢は、まるで尋問みたいだ。

「ダイアナよ」私は視線を受け止め、疲れた笑みを無理やり形にする。「泣いてた。婚約者に浮気されて、婚約を破棄して出ていきたいって」

カシウスの眉間がすっとほどけた。彼は手を伸ばし、私の頬を包み込む。

「愚か者め」権力者特有の傲慢さが、声にねっとりと絡みついていた。「そんな男は、すべてを失って当然だ」

彼は額を私の額に押し当てる。狭い距離で、互いの息が絡み合った。

「エヴリン、ああいう泥沼は俺たちには起きない。俺は決しておまえを裏切らない」溺れてしまいそうなくらい、柔らかな声だった。

硬くなった指先が私の腰のラインをなぞり、そのまま無意識に下腹部――新しい命が静かに育っている、まさにその場所の少し上で止まった。

言いたかった。赤ちゃんができたのだと告げたかった。けれど彼の顔を見てしまう――ついさっきまで、愛人と別の赤ん坊の話をしていた、あの顔を。

私の子は、こんな父親はいらない。

「そう?」私はくすりと笑い、彼の目をまっすぐ射抜く。「でも、もし本当にその日が来たら? カシウス、あなたが私を裏切ったらどうなるの?」

彼の眉が鋭く寄った。

「そんな日は来ない」歯を食いしばるように言い切る。「もし万が一そうなったら、俺が持つすべてを失えばいい。家は崩れ、部下は俺に背を向ければいい。残りの人生の一秒一秒を、おまえを失う地獄で腐らせてやる」

「本当に?」私は問うた。

「もちろんだ」

そこまで熱心に誓うのなら、私はその誓いを守らせてあげる。言葉どおり、一字一句。

目を閉じ、彼の胸に身を預けた。この一度きり――最後の抱擁だと思いながら。

半開きだった扉が、突然、勢いよく押し開けられる。

「ドン、すべて準備が整いました」セレナが戸口に立ち、視線を真っ直ぐカシウスに固定していた。

カシウスは私の背を軽く叩き、手を取る。「行こう。サプライズがある」

数分後、私は本邸の大テラスに立っていた。

「三、二、一」彼が耳元でカウントダウンする。

専用港の上空で巨大な花火が炸裂し、夜空をまるごと照らし出した。周囲のVIP客たちが、どっと息をのむ声と歓声を波のように上げる。

カシウスは私を振り向かせた。皆の前で、彼は私の顔を両手で包み、深く口づけてくる。

「五年経っても、出会った初日のままだ、エヴリン。俺の人生の最高の宝は、おまえだけだ」唇の隙間に囁きが落ちた。

昔なら、それだけで涙が出ただろう。今は胃の奥がむかむかとねじれるだけだ。

さっき彼が手慣れた動きでセレナの尻を揉みしだいたのを見ていなければ、私は本気でこの迫真の演技に騙されていたかもしれない。

そのとき、彼の携帯が震えた。

特注の、プライベート専用の着信音。

カシウスの表情がわずかに揺れる。だがポケットには手を伸ばさない。「今夜はおまえのための夜だ。他の誰にも時間なんて割く価値はない」

きれいごと。でも彼の目までは縛れない。私ははっきり見た――視線が私の肩越しに流れ、人混みの端にいるセレナへ落ちるのを。彼女はシャンパングラスを掲げ、吐き気がするほど得意げな顔で彼を見返していた。

ポケットの震えはさらに激しくなり、戦鼓みたいに彼の背中を叩く。

私は頬の内側を噛みしめ、血の味がするほど力を入れて、心の中に残っていた情けない希望の欠片を殺した。そして自分から、半歩だけ下がる。

「そんなに鳴るなら、きっと急用なのね」彼のネクタイを整え、完璧に理解ある笑みを向ける。「行って。カシウス、仕事の邪魔はしないわ」

見逃さなかった。彼の瞳に一瞬走った安堵――やっと、血筋を宿した養女のもとへ、綺麗に逃げ出せるという安堵を。

「悪いな、エヴリン。すぐ戻る。待っててくれ」

彼はほとんど駆け足で去っていった。私は花火の灰がはらはらと降る下で立ち尽くし、彼が人混みを縫って進むのを見送る。テラスの向こうでは、セレナがすでに離脱しはじめていた。息の合った動きで、何も知らない客たちに紛れながら、二人は別々の扉からすり抜けて消える。

彼らにとって私は、安っぽい芝居の中の間抜けな役者――台本を知らない、たった一人の愚か者でしかない。

私は冷たく、彼が消えた方向を見据えたあと、踵を返して真っ直ぐ階下の地下駐車場へ向かった。

車のドアを開け、エンジンをかける。緊急事態だというのなら、忠実な妻として、どれほど切羽詰まった「急用」なのか、この目で確かめに行くのが筋だ。

アクセルを踏み込み、カシウスのテールランプから目を離さないまま、私は彼の後を追って終わりのない夜へと走り出した。

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