第8章

内部通達を受け取った。カシウスが研究所の理事会をすっ飛ばし、五十億ドルという莫大な寄付金を直接投下したという。

資金を解放する条件はひとつだけ。中枢ラボの見学ツアーを、主任の毒性学研究者が自ら、しかも非公開で彼を案内すること。

その主任が、私だった。

二年前の私なら、たぶん取り乱して、荷物をまとめて、一晩で街から消えていただろう。

けれど、モレッティ・ファミリーの影で怯えていたドナは、カシウスのもとを去ったその日に死んだ。

もう逃げない。

十分後、カシウスが入ってきた。

彼の視線が私を捉えた瞬間、カシウスは息を止めた。

飢えた獣のような光が、その瞳に迸る。

「エヴリン」

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