第1章
皆川霜介と付き合って七年目、私はパーティーで彼にプロポーズしようと、指輪を買った。
しかし、道が少し渋滞していて、パーティーに着いたのは少し遅れてしまった。
個室の中から、彼と友人たちの話し声が聞こえる。ドアを開けようとした、その時だった。霜介の声が耳に届いたのは。
「月咏夕か。とっくに飽きてる」
その声は平坦で冷淡。まるで、どうでもいい人か物について語っているかのようだった。
誰かが突然すべての音を消し去り、耳元で血が流れる音だけが轟いているかのようだ。胸の奥から鋭い痛みが広がり、私は一瞬動きを止めた。ドアノブにかけた手は、そのまま固まって降ろせない。
「七年だぞ。お前なら飽きないか?」
霜介は続けた。
七年。人生に、一体いくつの七年があるというのだろう。
「月咏さんってすごく美人だし、もし構わないなら俺がアタックしてもいい?」
と、男の声が尋ねた。
「好きにしろ」
霜介は気のない返事をする。
胃がきりきりと痛み、まるで誰かに強く掴まれたかのようだ。
私は何? 使い古されて、好き勝手に譲渡できる物なの?
「霜介が遊び飽きた女を拾うのかよ」
またもや、嘲るような笑い声が響いた。
屈辱感が、海水のように私を飲み込んでいく。
唇を噛み締め、血の味がするまでそうして、ようやく冷静さを取り戻した。
私は数歩下がり、携帯を取り出してメッセージを打つ。文字を打つ指先が、微かに震えていた。
「頭が痛いから、先に帰るね」
霜介からの返信は早かった。
「わかった」
ただそれだけ。気遣う言葉の一つもない。七年の感情が、こんな冷淡さと引き換えだというの?
個室内ではすぐに、私が頭痛で帰ったことが知れ渡ったらしい。誰かが尋ねた。「月咏のこと、心配しなくていいのか? 七年も一緒だったんだろ」
「何を心配するんだ?」
霜介の声には、苛立ちが滲んでいた。
「本当に具合が悪けりゃ、病院に行くだろ。月咏夕はああいう奴なんだよ。いつも大袈裟に騒ぐのが好きなんだ」
個室から、気まずそうな笑い声がいくつか漏れてきた。
「でもな」
霜介は続ける。その声には、聞くに堪えない自信が満ちていた。
「あいつは俺から離れられない。お前ら、あいつがどれだけ俺に依存してるか知ってるか? 一度俺が三日出張した時なんか、毎晩ビデオ通話しなきゃ気が済まなかったんだぜ」
また笑い声が起きた。今度はもっと遠慮がない。
私は拳を握りしめる。爪が肉に食い込んで痛んだが、その痛みこそが私の理性を呼び覚ましてくれた。別れを決意した。
数日後、私の交友範囲で皆川霜介の新しい恋の噂が広まった。
彼が大学二年生の亜澄という子を追いかけているという話だった。
その子は若く美しく、天真爛漫で、あっという間に皆川霜介の猛攻に陥落したらしい。
かつての私のように。
彼の友人たちは二人をくっつけようと、わざわざパーティーを開いた。
そのパーティーには、私も招待された。
私が部屋に入ると、その子は霜介の隣に座っていて、霜介は自らの手で彼女のために海老の殻を剥いていた。
彼は私のために、そんなことをしてくれたことなど一度もなかった。汚れるし、御曹司である彼の品位を損なうとでも思っていたのだろう。
「ちょうどよかった」
皆川霜介は顔も上げずに言った。
「月咏夕、ここ数年、俺たちはくっついたり離れたりして、もう感情も冷めてるだろ」
彼は殻を剥いた海老をその子の皿に入れ、それからようやく手を拭いながら、気だるげに私を見た。
「俺は本気で亜澄のことが好きなんだ。彼女を悲しませたくない。ちゃんと立場を与えてやりたい」
「お前もさっさとけじめをつけろよ。みんなを気まずくさせないで……」
「うん、いいよ」
私は平然と彼の言葉を遮った。
悲しくないと言えば嘘になる。あれほど彼を愛していた。七年も。私たちの未来は、私の生活の中に組み込まれていた。今、彼がそれを引き抜こうとしているのに、痛くないわけがない。
でも、こんな惨めな思いはしたくなかった。私の七年間を、彼らの笑い話になんてさせたくない。
「お幸せに」
私は重ねて言った。
皆川霜介は驚いて私を見た。私がこんなにあっさり承諾するとは思っていなかったようだ。彼は眉をひそめたが、ただこう言っただけだった。
「まあ、長いこと一緒にいたんだし、友達としてはやっていけるだろ。これから何かあったら、俺に相談してもいい」
恋人から友達へ。彼はなんて簡単に格下げをするのだろう。
「結構です。ありがとう」
私はきっぱりと断った。
部屋を出る時、廊下にまで半開きのドアの隙間から河合大輔の声が聞こえてきた。
「あいつ、ちょっと怒ってるみたいだったな」
皆川霜介の口調には、どこか侮りが含まれていた。
「あいつはああいう奴なんだよ。怒るとすぐ拗ねる。数日もすれば泣いて戻ってくるさ」
「三日も持たない。泣きながら戻ってくる」
彼は自信満々だった。
「だよな。あいつがお前のこと狂うほど愛してて、絶対離れられないってのは誰もが知ってるし」
私は自嘲気味に笑い、通りがかった池に指輪を投げ捨てた。
