第8章
朝霧蓮との婚約を控えた一週間前、一本の見知らぬ電話がかかってきた。
電話の向こうから聞こえてきたのは、年季の入った、それでいて矍鑠とした老仕立て屋の声だった。
「月咏様、ウェディングドレスが仕上がりましたが、いつ頃お受け取りになりますか?」
私は一瞬呆然とした。
「どちら様でしょうか?」
私の会話を聞きつけた朝霧蓮が、眉をひそめて電話を代わった。
「失礼ですが、どなたからのご依頼で?」
その声には、いくばくかの警戒が滲んでいた。
「皆川様です」
老仕立て屋は率直に答えた。
朝霧蓮の表情が、少し不機嫌なものに変わる。
「申し訳ありませんが、ウェディングドレス...
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