第3章

 レオはソフィアの背後にさっと身を隠した。「見たんだ! あの人が……ソフィアママの化粧台から取った!」

 私は凍りついた。

 肋骨の奥に、ぎざぎざした痛みがねじ込まれる。

 ソフィアに洗脳されているのは分かっていた。だが、実の息子の口からその告発を聞かされると、膝から崩れ落ちそうになった。

「レオ……」声が途切れた。「何を言ってるの?」

 私はしゃがみ込み、目線を合わせる。「レオ、私は離婚の書類を渡しに行っただけよ。盗んでなんか――」

「離婚の書類? みっともない!」ソフィアの甲高い声が、私の言葉を切り裂いた。「あんたは私から根こそぎ奪いに来たのよ!」

 言い返す間もなく、影が私に落ちた。

 凶暴な力が肩を打ち据え、私は後ろへ吹き飛んだ。肘が大理石の床に叩きつけられ、鈍い音がした。

 ヴィクターが見下ろしていた。死んだような目で。「他に言うことはあるか、エレナ?」

 彼は屈み、巨大な手で私の顎をがしりと掴むと、頬肉に指を食い込ませた。

「理解に苦しむんだが」彼は低く囁く。「盗んでいないなら、なぜ自分の血を分けた子が、お前を嵌めるのか?」

 目が熱くなった。

 出口のない罠だった。

 ソフィアはその隙を逃さず、レオを大げさに抱きしめた。たちまち涙がこぼれる。「レオがいてくれてよかった! この子がいなかったら、私がただ彼女をいじめてるだけって思われちゃう!」

 彼女は赤く火照ったレオの頬にキスを落とした。「いい子ね、レオ」

 レオは彼女の腕の中でもぞもぞと身をよじり、視線を床へ泳がせたまま、私を見ようとしない。嘘をついていると自覚している。罪悪感が見て取れた。

 それでも、撤回しなかった。

 ヴィクターは私の顎を放し、汚物に触れたかのようにズボンで手を拭った。「子どもが母親に敵対している。ここまでだ」

 ソフィアは乾いた目元を軽く押さえる。「ヴィクター、もういいじゃない。彼女はレオを産んだのよ。騒ぎにはしたくないわ」

 喉の奥から荒い嘲りが漏れた。慈悲じゃない。私に懇願させるための罠だ。

「何が望み?」私は掠れた声で言い、立ち上がった。

 ソフィアは微笑みながら近づく。「ただの補償よ。五百万払ってくれたら、帳消しにしてあげる」

 五百万。ヴィクターが三年間、「小遣い」として私の口座に入れてきた額と、ぴたり同じ。

「私は取ってない」私は唾を吐くように言った。「払わない」

「好きにすれば」ソフィアは冷笑する。「じゃあ家の掟ね。どの指を残したいか選びなさい」

 ヴィクターがライターを弾き、葉巻に火をつけた。「家の掟では」彼は私の手を見つめながら言った。「盗人は指を三本失う」

「勝手にすれば」私は言った。「帰る」

 私は踵を返し、扉へ向かって歩き出した。こんな悪趣味な茶番に乗るくらいなら、手を失ったほうがましだ。

 ドアノブに手が届く前に、背後にヴィクターがいた。彼は木の扉に手を叩きつけ、私の逃げ道を塞ぐ。

「借りは借りだ」耳元で唸る。「現金で払えないなら、別の方法がある」

「ヴィクター!」私は彼の胸を押した。「盗んでない! あなたなら分かってるでしょ!」

 彼はびくともしない。手首を掴まれ、骨が擦れ合うほど捻り上げられた。痛みで息が漏れる。「まだ離婚してないんだろ?」

 彼は私を廊下へ引きずり出し、立ち入りを禁じられた東館へ向かって引っ張った。

 オーク材の扉を乱暴に開け放つ。中には、上質な革張りのベッド、石造りの壁に固定された手錠、そして廊下に向けて設置されたマジックミラーがあった。

 彼は私をドア枠へ押しつけた。「今夜は雑用係をやれ。外に立て。頼まれたものを全部出せ。それで貸しは帳消しにしてやる」

 廊下の向こうからソフィアが追いつき、私の横をすり抜けていく。胸が悪くなるほど勝ち誇った笑みだった。彼女はヴィクターの胸に手を置き、隠そうともしない嘲笑を瞳に浮かべる。

 ヴィクターは彼女の腰を掴んで部屋へ引き入れた。

 扉が私の顔の前で叩きつけられる。

 十時間、悪夢が続いた。

「潤滑剤」インターホン越しにヴィクターの命令が響く。

 四度、私は見えないままボトルをサービス口から差し入れた。

「タオル」

 六度。

「シーツを替えろ」

 三度、私は入口に立ち、真っ白な壁を睨んだ。ベッドで絡み合うヴィクターとソフィアを見ないように。汚れたシーツを引き剥がす手は、激しく震えていた。

 木越しに漏れてくる息遣いも、喘ぎ声も、刃物みたいだった。まだ私の中に残っていた彼への惨めな愛情の切れ端を、一枚ずつ削ぎ落としていく。

 夜勤のメイドたちが通り過ぎ、指をさして笑った。

「本当に恥知らずね」

「屈辱に耐えてる。出ていくのを拒んだ報いよ」

 私は爪を掌に食い込ませ、血が絨毯に落ちるまで握りしめた。鋭い痛みだけが、背筋を折らせずに保ってくれる。壁にもたれ、目を閉じた。

 十二年前。十六歳のヴィクターが膝をつき、額から血を流していた。彼の父親は、私を敵対組織のボスに売り渡そうとしていた。

「お願いだ! やめてくれ! 彼女はまだ子どもなんだ!」

 ヴィクターは肋骨が折れるまで蹴られ、歩けなくなるまで膝をつかされ続けた。父親は最後通告を突きつけた。「俺のために殺せ。そうしたら、あの娘は解放してやる」

 それが彼の初めての殺しだった。初めて血に触れた夜――私に一夜の屈辱すら味わわせないために。

 私は目を開けた。

 私のために膝を潰した少年は、もういない。代わりに、二十八歳のマフィアのボスが、私を扉の外に立たせたまま、自分の継母と寝て、私を壊そうとしている。

「敵のベッドで裸になったとしても、お前のほうがよほど害を与える」

 昨日の言葉が腑に落ちた。彼は私を傷つけようとしていたんじゃない。事実を述べただけだ。彼は本当に、私のことなどどうでもよかったのだ。

 私を愛した少年は死んだ。

「十六歳は……十二年前」私は囁き、頬の涙を拭った。もう、子どもでいるのは終わりだ。

 午前六時十五分、脚は痺れ切っていた。掌の傷はかさぶたになっている。私は扉を振り返らず、機械みたいに自分の部屋へ戻った。

 隠し引き出しから、キャッシュカードを取り出す。古い宝飾品を売って貯めた、わずかな貯金が口座に残っている。ここから出る切符代には十分だ。

 カードをコートのポケットに滑り込ませ、署名済みの書類を机に置き、廊下へ出た。

 廊下の端にレオが立っていた。ぬいぐるみのクマを抱え、裸足のまま、気まずそうに体重を左右に移している。

 唇が開き、ためらうように一歩踏み出した。

「あの……」小さな声が震えた。「ぼく……」

 私は答えなかった。視線を断ち切り、そのまま歩き続けた。

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