第1章

 会場の中央に立ち、私とギデオンの結婚五周年を祝うゲストたちの言葉に耳を傾けながらも、私の心は凍てついたように冷え切っていた。

 周囲では、人々が口々に話し続けている。

「ギデオンがどれほどイザベラを愛しているか、誰もが知っていることだ。あの彼女を見る目つき、見たか?」

「結婚して五年経つのに、まるで新婚夫婦のようね」

「ストリートから這い上がり、今やニューヨーク全体を牛耳るまでになった。まさに生けるおとぎ話だ」

 おとぎ話、か。笑わせてくれる。

 三日前、雇っていた私立探偵から一本の動画が送られてきた。それをクリックして再生した瞬間、心臓が止まるかと思った。

 画面の中のギデオンは衣装室にいて、白いドレスが並ぶディスプレイの方へ、ある金髪の女性の腰に手を添えてエスコートしていた。その女性がわずかに振り向き、カメラがその横顔を捉える。何より滑稽だったのは、私が見知った顔だったことだ。デイジー。ギデオンの初恋の相手。

 私に告げたロンドンへの出張など嘘だった。彼は二つ隣の街で、別の女とウェディングドレスを選んでいたのだ。

 あの日、私は自分が妊娠していることを知った。位置情報を頼りに彼を追いかけ、驚かせてやろうと思ったのに、驚かされたのは私の方だった。彼は位置情報が示す場所にさえいなかったのだから。だから私は、彼を見つけ出すために探偵を雇ったのだ。

「イザベラ!」

 思考を遮ったのはギデオンだった。彼は黒いベルベットの箱を手に、こちらへ歩み寄ってくる。

 私の前で立ち止まった彼の緑色の瞳は、あまりにも温かく、愛情に満ちていた。なんて上手な嘘つきなのだろう。

「五年前、君に世界を捧げると誓った」彼は声を張り上げた。「今夜、その約束にまた一歩近づいた」

 彼が箱を開けると、そこにはエメラルドのネックレスが輝いていた。

 彼はそれを私の首につけ、額にキスをした。

「ギデオン、奥さんを甘やかしすぎだぞ!」後方から誰かが野次を飛ばす。

「彼女にはそれだけの価値がある」ギデオンは私を抱き寄せながら続けた。「この女性は地獄のような日々を共に歩んでくれた。俺のために銃弾を受け、血を流してくれた。今の俺の命があるのは彼女のおかげだ」

 会場は歓声と口笛に包まれた。

 なら、なぜあの女とウェディングドレスを選んでいたの? その問いが脳裏を焼き尽くす。私があなたの子を宿したと知ったその日に、なぜあんなことをしていたの?

「さて、今夜のために特別なビデオを用意したんだ」ギデオンが言った。

 照明が落ちる。

 だが、私たちの結婚式の写真でも、私が承認した感動的なモンタージュでもなく――

 スクリーンいっぱいに映し出されたのは、裸の女性たちの写真だった。

 会場が静まり返り、誰かが息を呑む音が聞こえた。

 顔の感覚がなくなり、肺に空気が入ってこない。

 一体、何が――

「消せ! 今すぐ消せ!」誰かが怒鳴った。

 照明が再び点灯する。

 その時、部屋の向こうに彼女の姿が見えた。金髪で小柄、淡いピンクのドレスを纏っている。すでに顔を涙で濡らしながら、ギデオンの方へと駆け寄ってきていた。

 デイジーだ。

 ギデオンはステージから飛び降りると、彼女は彼の胸に飛び込み、泣き崩れた。

 彼は真っ直ぐに私を見た。

「イザベラ」彼は私の肘を掴み、部屋の隅へと強引に連れて行った。「今すぐ話がある」

「一体どういうこと?」

「あの写真だ」彼は私と目を合わせずに言った。「あれはデイジーのものだ」

 急にめまいがした。

「誰かが彼女の評判を落とそうとしているんだ」彼は続ける。「頼みがある」

「あの写真は君のものだと言ってくれ」

「……今、なんて言ったの?」

「写真は君のものだと公表してくれ」彼はそれが理にかなっているとでも言うように言った。「数日もすればほとぼりは冷める。だが、デイジーにこんなスキャンダルは耐えられない。彼女は繊細すぎるんだ。でも君には、面と向かって悪口を言える奴なんていない。君は俺の妻だ。誰も手出しできない存在なんだから」

 誰も手出しできない、だって。

「今日は私たちの結婚五周年記念日よ、ギデオン」全身を滅多打ちにされたような惨めな気分だった。

「わかってる、わかってるよ。本当にすまないと思っている。だが、今彼女には俺が必要なんだ。君は彼女よりずっと強いだろう?」彼はそれを褒め言葉のように言った。「たった一晩、ほんの小さな犠牲だ」

 ほんの小さな犠牲。

「……わかったわ」自分の声が聞こえた。

 安堵の色が彼の顔に広がった。「ありがとう。ああ本当に、ありがとうイザベラ――」

 彼はすぐに背を向け、デイジーのもとへ戻ると、彼女を連れて会場を出て行った。

 ゲストたちも逃げるように去っていった。

 私は一人で家に帰った。

 モレッティ邸は完全に闇に包まれていた。ギデオンがまだ帰っていないのは明白だった。

 私はベッドの端に座り、あの動画をもう一度見返した。

 手が自然とお腹に伸びる。まだ完全に平らだ。中に命が宿っている兆候は何もない。

 それでも彼に伝えるべきではないか、という思いが心のどこかにあった。彼は父親なのだから、知る権利があるはずだと。

 だが、今の彼に私から何かを得る権利など、本当にあるのだろうか?

 携帯が震え、新しいメッセージが届いた。

 ギデオンからのメッセージ。「デイジーと一緒だ。彼女はかなり動揺している。今夜は彼女の家に泊まって様子を見るつもりだ。俺のことは待たなくていい」

 その文字を見つめていると、突然すべてがクリアになった。私の子に、不誠実な父親など必要ない。離婚して、この子と一緒に出て行こう。

 すると、別の番号からもう一通メッセージが届いた。

 私の父からだ。

「賭けは終わりだ、イザベラ。君の勝ちだ。十日後、ガラパーティーを開いて君の本当の身分を一族に公表する。ギデオンを君の夫として認めよう。帰ってきなさい。家族が待っている」

 視界が涙で滲んだが、決してこぼれ落ちないように堪えた。

 私は返信を打ち込んだ。

「十日後。午後三時。空港に迎えの車を寄越して」

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