第二十三章

ハンナ

私はもうしばらく彼の視線を受け止め、言葉にできない何かを探した。やがてドアを開け、廊下へ踏み出す。

「さよなら、レオナルド」

返事はない。エレベーターへ向かうあいだ、私は振り返らなかった。扉が閉まるその瞬間、出入口に立ってこちらを見送る彼の姿が視界から切り取られる。

ロビーまで降りる時間がやけに長く感じられた。バッグを握り締め、内側の封筒の重みを確かめる。いったい、いくら入っているのだろう。残りの契約期間を埋め合わせるには十分なのか。それ以上なのか。

外で待っていた艶やかな黒い車に乗り込むと、ようやく涙がこぼれた。レオナルドに恋をしていたからではない。していないし、できるはずもな...

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