第11章

大学の図書館から出ると、冷たい夜の空気が肌を刺した。

スマホの表示は午後九時半。和也はまだ「急用」とかで捕まっている。私はジャケットの前をきつく合わせ、アパートへと向かった。

(明日は境界レース。山本さんの計画、うまくいくといいけど)

背後で、足音が響いた。

後ろを振り向くと、暗がりから大柄な男が二人現れた。そのうちの一人は見知った顔だった。龍一の腹心、大輔である。

大輔はにやりと笑った。「うちのボスがお前と会いたがってる」

「ごめんなさい、用事があるの。先に家に帰らないと」私は数歩後ずさった。

「こいつは頼んでるんじゃねえんだよ」

大輔が私に向かってくるのと同時...

ログインして続きを読む