第8章

白い天井。    消毒液の匂い。

ゆっくりと瞬きをすると、意識がじわじわと戻ってきた。

ベッドの傍らの椅子に和也が座っていた。目は充血し、何日も眠らずに看病していたかのように重く落ち窪んでいる。私が目を開けたのに気づくと、彼は私の手を掴んだ。

「香織、気分はどうだ?」普段になく優しい声だった。

私は気怠く頷いた。喉は紙やすりのように乾いている。「お父さんが……」

和也の顔がさっと曇った。「死んじまった。部下を二人も失ったんだ。俺は何もできなかった」

その言葉を聞いた瞬間、涙が込み上げてきた。

(あのクズ、やっと死んだ!)

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