第4章

土曜日の朝。玉子焼きの甘い香りが、私に吐き気を催させた。

奏介はキッチンで鼻歌を歌っていた。私たちの初デートの時の曲だ。フライ返しを操る彼の手首の動きは優雅で、昨日、玲奈を愛撫していた時と同じくらい手慣れていた。

私は三杯目のコーヒーを淹れた。ブラックコーヒーの苦味が、少しだけ頭をすっきりさせてくれる。昨夜の夢は、絡み合う二人の姿で埋め尽くされていた。目が覚めた時、枕は涙で濡れていた。

明け方に玲奈から届いたメッセージを見つめる。あの忌々しいハートの絵文字が、私を嘲笑っているように見えた。

だが、彼女に会う前に確かめる必要があった。奏介がどこまで演技を続けられるのかを。

私はキッチンカウンターに座り、指の関節が白くなるほど強くコーヒーカップを握りしめた。

「ねえ、もし私が浮気したらどうする?」

フライ返しが空中で止まる。奏介はゆっくりと振り返った。その茶色の瞳の奥で、何かが揺らめいた。

「なんだって?」

「つまり……たとえばの話」私は何気ない調子を装った。「許してくれる?」

バン! 奏介がフライ返しを叩きつけ、生地がエプロンに飛び散った。

「美咲、本当は何が聞きたいんだ?」

「別に、ただ映画を見て……」

「そんなことを聞きたくなるような映画って何だ?」

彼の声は冷たく変わり、まるで氷を削る刃のようだった。

心臓が早鐘を打つ。彼は何を恐れているの?

「忘れて。今のなし」

奏介が大股で歩み寄り、小麦粉のついた手で私の顔を挟み込んだ。

「そんな仮定の話なんて必要ない。愛してるよ。君だけを」

その瞳はあまりに誠実で、献身的だった。もし自分の目で見ていなければ、また信じてしまったかもしれない。

「いいかい?」奏介の親指が私の頬を撫でる。「そういう質問は傷つくんだ。俺たちの全てを疑われているようで」

でも、私たちの全てはもう嘘だった。

「ごめんなさい」私はうつむき、睫毛を震わせた。

「バカだなあ」奏介は私の額にキスをして、朝食作りに戻った。「医者ももっと食べるように言ってたじゃないか。赤ちゃんに栄養が必要なんだから」

赤ちゃん。

無意識に手が腹部へと伸びる。この子の父親は、完璧な嘘つきだ。

玉子焼きを一口かじった。段ボールのような味がした。頭の中は一つのことで一杯だった――どうすれば彼の本性を暴けるだろうか?

昼食後、リビングルームにて。

私は読書をしているふりをしていたが、一文字も頭に入ってこない。向かいのソファでは、奏介が建築雑誌をめくっている。エアコンの低い駆動音が静寂を埋めていた。

時間だ。

「奏介」

「ん?」彼は顔を上げない。

深呼吸。もう一度、深呼吸。

「匿名のメールが届いたの」

雑誌が勢いよく閉じられた。奏介が弾かれたように立ち上がる。顔色は土気色だ。

「どんなメールだ?」

「あなたが……あなたが浮気をしているって」

ガシャン! コーヒーテーブルの上のグラスが倒れ、水が辺りに広がった。奏介の顔が歪む。

「なんだと!? 誰が送ってきた?」

「わからない……」

「そのメールを見せろ! 今すぐに!」彼はほとんど怒鳴っていた。こめかみに青筋が脈打っている。

「自動的に消えちゃって……」

「だったら何で信じるんだよ!?」

パリーン! 別のグラスが砕け散り、破片が飛び散った。私は反射的に身を縮めた。

「信じてないわ! ただ……」

「ただ何だ?」奏介が血走った目で詰め寄ってくる。「お前の命を救った人間を疑うっていうのか?」

命の恩人。彼はいつもその話を持ち出す。まるで永遠の免罪符のように。

「奏介、私は……」

「三年だぞ、美咲! 三年だ!」彼の声は震えていた。「俺は毎日、愛を証明してるじゃないか! 毎日だぞ!」

突然、彼はその場に膝をついた。

ドサッ、と彼の膝が床を打った。彼は私の手を掴むと、まるで溺れる者が流木にしがみつくような強さで握りしめた。

「頼む」彼の声が裏返る。「俺を信じてるって言ってくれ」

私は目の前に跪く男を見下ろした。完璧な婚約者。完璧な役者。涙で視界が滲む――それが怒りによるものなのか、悲嘆によるものなのか、自分でもわからなかった。

「私……」

「お願いだ」彼は私の掌に顔を埋め、肩を震わせた。「君を失うなんてできない。君と赤ちゃんは、俺の全世界なんだ」

彼が流した涙が私の手に落ちる。その熱さに、思わず手を引っ込めたくなるほどだった。

「信じてるわ」

私はそう口にしていた。

奏介が弾かれたように顔を上げる。その目は赤く充血していた。「本当に?」

私が頷くと、彼は立ち上がり、息ができないほど強く私を抱きしめた。

「ごめん。カッとなったりして悪かった」彼は私の耳元で囁いた。「でも、君に疑われているかと思うと、つい……」

つい、すぐに泣き崩れる演技をしただけでしょ?

「いいの」私は彼の背中を軽く叩いた。「私が悪かったわ」

彼はさらに強く私を抱きしめる。まるで私を自分の体に取り込もうとするかのように。足の力が抜けそうになるまで、私たちはそうして立っていた。

夜になり、彼は「休む必要がある」と言った。妊婦はあまり興奮してはいけないから、と。そうして今、私たちは寝室のベッドに横たわり、彼は私を抱き寄せている。

私は彼の胸に頭を預け、規則正しい心音を聞いている。かつて私のために止まりかけたこの心臓は、今、他の誰かのために高鳴っているのだ。

「いいかい?」彼の手が私の髪を撫でる。「骨髄移植の時、俺は死にかけたんだ」

また始まった。恩人という名の切り札。

「医者は、成功率はたったの六十パーセントだと言った。同意書にサインする時、手が震えて止まらなかったよ」

私は目を閉じた。喧嘩をするたびに、彼はこの話を持ち出す。

「でも、君が助かったのを見て、全てが報われたと思った」

彼の声は詩のように優しかった。

「俺の人生で最高の決断は、君を救ったこと、そして君と恋に落ちたことだ」

「奏介……」

「君と赤ちゃんは、俺の全てだ」彼の手が私の腹部へと滑り落ち、崇めるように触れた。「誓うよ。絶対に君を裏切ったりしない」

その言葉の一つ一つが、ナイフのように突き刺さる。

だってつい昨日、彼はこのベッドで玲奈とヤッていたのだから。彼の「絶対に」は、あまりにも安っぽい。

私は彼の腕の中で、声を殺して泣いた。涙が頬を伝い、彼のシャツを濡らす。

「泣かないで」奏介がキスで涙を拭う。「君を不安にさせた俺がいけないんだ」

違う、あなたが演技上手すぎるからよ。

「ああ、そういえば」突然、奏介が言った。「明日は玲奈とどこでお茶するんだっけ? 車で送っていくよ」

「紅葉通りにできた新しいカフェよ」私は必死に声の震えを抑えた。

「ああ、あそこか」彼は私の髪をくしゃりとかき回した。「いい店らしいね。二人でゆっくり話すのも久しぶりだろう」

「ええ」

「送っていく必要はない?」

彼はあまりに自然にそう尋ねた。昨日の午後、彼女と寝ていたことなど微塵も感じさせずに。

「ううん、自分で運転していくわ」

「わかった」奏介は微笑んだ。「女性同士の時間も必要だよね。彼女なら、君の不安を取り除いてくれるかもしれないし」

不安を取り除く? 私は彼を見上げた。彼の表情は穏やかで、甘やかすような笑みさえ浮かべている。

「だって……」彼は私の耳元に顔を寄せた。熱い吐息がかかる。「彼女は俺のことを一番よく知ってるから」

体のことを? テクニックを? それとも、あなたがどれだけ嘘つきかということを?

「奏介?」

「ん?」彼は無邪気に瞬きをした。

「ううん、なんでもない」

私は再び彼の胸に顔を埋め、目を閉じた。彼の抱擁は変わらず温かかったが、あの言葉――「彼女は俺のことを一番よく知ってる」――が、棘のように心に刺さったままだった。

明日の午後二時。私は「婚約者のことを一番よく知る」女に会いに行く。

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