第86話

そこで私はドアの内側をノックし、見張りの一人が開けてくれた。

「トイレに行きたいの」と私は言った。彼は私をベッドの鎖から解き放ち、トイレへと連れて行った。

ドアを閉めると、幸運なことに鎖はドアの下の隙間にぴったりと収まったので、ドアを開けたままにする必要はなかった。それが私に与えられた唯一の勝機だったと思う。

私はマットレスから引き抜いておいたバネを使って足かせの鍵をこじ開け、トイレの水を流し、洗面所の蛇口をひねって水を出しっぱなしにしてから、そっと窓を開けた。

窓枠によじ登る。二階だったが、何と言っても私は人狼だ。これくらい何でもない。

窓から飛び降り、横向きに地面に落ちた。嘘はつ...

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