第153章

彼女がこの前、断った――あの一本。

「……なつちゃん、きれいだ」

結城朔夜は彼女の背後に立ち、そっと身をかがめて耳元へ囁いた。

言葉を落とすたび、喉仏が一度、ゆっくりと上下する。深い瞳は鏡の中を見据え、やわらかく溺れるような視線が、鏡越しの彼女と絡み合った。

瑚夏は鏡の中の男を見て、ほんの一瞬、意識が遠のく。

今日の結城朔夜は、ベージュのオーダースーツ。背筋の通った体つきがいっそう際立ち、彫りの深い顔立ちは冷ややかで高貴で――目を逸らせない。

反則みたいに、格好いい。

優しさまで、ずるい。

「つけてあげようか?」

結城朔夜は箱を開け、ネックレスを取り出した。

ダイヤの鋭い...

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