第32章

瑚夏はスマホに目を落とし、30分きっかりで男の身体に打っていた銀鍼を抜いた。

男はゆっくりと意識を取り戻していく。

そのころには、すでに交通警察と警官が到着してしばらく経っていた。

瑚夏は事情を説明し、調書も取り終えている。

あとは、この男を警察に引き渡せばそれで済む。

銀鍼をしまい、立ち上がる。

そのまま帰ろうとした、そのときだった。

彼女が行こうとするのを見て、男ががばっと起き上がり、腕をつかんだ。

「行かないで」

そう言っているみたいな目だった。

置いていかないで、とでも訴えるように。

男は本当に細い。

肌は不健康なほど白く、日をほとんど浴びていないのがひと目で...

ログインして続きを読む