第51章

結城朔夜は、ちょうどドア口に立っていた。

彼の角度から見えたのは、瑚夏が渡辺直樹に覆いかぶさるようにして、二人が強く抱き合っている姿だった。

ただでさえ冷ややかな瞳が、ほんの一瞬で昏く沈む。

その奥に渦巻いたのは――自分のものを、他人に触れられたような苛立ちだった。

本来なら、ここは見なかったことにして引くべきだ。

気配を殺して外へ出て、そっと扉を閉めるべきだった。

けれど足は床に縫いつけられたみたいに、ぴくりとも動かない。

「朔夜、どうした?」

背後から、結城悠馬が不思議そうに声をかける。

結城朔夜は、兄だけを中へ入れるべきか、それとも二人そろって引くべきか――その一瞬の...

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