第77章

瑚夏は、自分の耳がこんなにも良くなければいいのにと思う。

どうしてこう、聞きたくもない声ばかり拾ってしまうのか。

それでも彼女は何も言わなかった。

椅子に腰かけたまま、冷えた光をたたえた瞳で、左から右へとゆっくり見渡していく。

最初のうちは、ひそひそ話も止まらなかった。

けれど次第に、会議室はしん、と静まり返る。針が落ちても聞こえそうなほどに。

その様子を横で見ていた福田志那は、さっきまで好き勝手に騒いでいた連中が、瑚夏の視線ひとつでおとなしくなっていくのを見て、内心でこっそり毒づいた。

ほら見ろ、あんなに調子に乗ってたくせに。

渡辺社長にひと睨みされたら、結局みんな黙るんじ...

ログインして続きを読む