第86章

結城朔夜は案の定、この老いぼれの腹の内をすっかり見抜いていた。

息子がまだ死んでもいないうちから、その手にある株を狙うなど。

父親失格もいいところだ。

小林子安はあらかじめ用意していた契約書を取り出した。

「事前に契約書を作成しておきました。渡辺社長、ご確認ください。問題がなければ、そのままご署名を」

「明日から海外で案件に入ります。戻りはおそらく1か月後です」

つまり、今日ここで署名しなければ、次は1か月後になるということだ。

そして渡辺家の会社に、その1か月を待つ余裕はない。

渡辺明山は契約書を受け取り、隅々まで目を通した。

慎重な男だ。じっくり30分かけて読み込み、よ...

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