第3章

「お母さん、今残業中だから、また後でね」

肩でスマホを挟み、机の上の書類を片付けながら、私は母に適当な相槌を打った。

「美玲、荷物送ったから。明日には着くと思うわよ」電話の向こうから母の声が聞こえる。「先週のお見合い、またダメだったんだって?あの子、すごく条件良かったのに。一体どんな人を探してるの?」

私は心の中で白目を剥いた。「条件が良く見えただけだって」

「あなたももう三十よ。これ以上選り好みしてたら、本当に誰もいなくなるわよ」母はため息をついた。

「お母さん、残業中だって言ってるでしょ」私は苛立ちを隠さず、母の言葉を遮った。

「はいはい、わかったわよ。お仕事の...

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