第5章
目を閉じ、十七歳の神谷亮介についての記憶に浸る。
琥珀色の瞳は、いつも冷徹な光を湛えていた。特にあの日、彼が廊下に立ち、私と星野健太の間に割って入ってきた時のことは忘れられない。彼の声は穏やかだったが、有無を言わせぬ確固たる意志が籠もっていた。「健太先輩、もう行くべきだと思います」
亮介が本気で怒っているのを、私はその時初めて見た。普段の彼はいつも天文台の望遠鏡の傍で気怠げに寄りかかり、星の光を顔に浴びながら、その瞳には宇宙への尽きせぬ好奇心を映していた。星空を見上げるのが好きだったあの少年が、その瞬間、まるで壁のように、私とあらゆる闇の間に立ちはだかったのだ。
亮介は、傑出し...
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チャプター
1. 第1章
2. 第2章
3. 第3章

4. 第4章

5. 第5章

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